ウェブサイト エラーメッセージ アクセシブル設計のポイント
ウェブサイトを利用する際、入力ミスなどでエラーが発生することは避けられません。このエラーメッセージが、誰にとっても分かりやすく、適切に伝わるように設計されているかどうかが、利用者体験の質を大きく左右します。特に、障害のある方や高齢者にとって、アクセシブルでないエラーメッセージは、サイトの利用を断念せざるを得ない原因となることがあります。
本稿では、ウェブサイトにおけるエラーメッセージのアクセシブルな設計について、具体的なポイントを利用者の視点から解説します。
エラーメッセージのアクセシビリティが重要な理由
エラーメッセージは、ユーザーに問題が発生したことを伝え、その問題を解決するための手助けをする重要な要素です。アクセシブルでないエラーメッセージは、以下のような課題を生じさせます。
- 情報の欠落: スクリーンリーダー利用者は、エラーの発生や内容に気づきにくい場合があります。
- 理解の困難: エラー内容が専門的すぎたり、漠然としていたりすると、どう修正すれば良いか分かりません。
- 問題解決の阻害: エラー箇所が特定しにくい、修正方法が分からないといった状況は、ユーザーのタスク完了を妨げます。
- 利用意欲の低下: 何度試してもエラーを解決できない場合、ユーザーはサイトの利用を諦めてしまう可能性があります。
これらの課題を解消し、すべてのユーザーが円滑にサイトを利用できるようにするために、エラーメッセージのアクセシブル設計は不可欠です。
アクセシブルなエラーメッセージ設計の具体的なポイント
アクセシブルなエラーメッセージを実現するためには、いくつかの重要な考慮点があります。
1. エラーの発生を明確に通知する
エラーが発生したことをユーザーに確実に伝える必要があります。これは視覚的な表示だけでなく、支援技術に対しても同様です。
- 視覚的な表示: エラーメッセージは、関連する入力フィールドの近くなど、ユーザーの注意を引きやすい場所に明確に表示します。エラーがあるフィールドを視覚的にハイライト(色やアイコンなど、ただし色だけに頼らない)することも有効です。
- 支援技術への通知: スクリーンリーダーなどの支援技術に対し、エラーが発生したこと、そしてエラーメッセージの内容をプログラム的に通知する仕組みが必要です。ARIA live regions (
aria-live="assertive"
など) を使用して、エラーメッセージが表示された際に自動的に読み上げられるように設定することが一般的です。
2. エラー内容と修正方法を具体的に提示する
エラーメッセージは、何が問題なのか、そしてその問題を解決するためにユーザーが何をすれば良いのかを、誰にでも理解できる言葉で伝える必要があります。
- 具体的で分かりやすい表現: 「エラーが発生しました」のような漠然とした表現ではなく、「メールアドレスの形式が正しくありません」「パスワードは8文字以上で入力してください」のように、具体的な問題点と要求される形式を明確に示します。専門用語や略語は避け、平易な言葉を使用します。
- 修正方法の提示: 可能であれば、どのように修正すればエラーが解消されるのか、具体的な手順やヒントを示します。
- ポジティブな表現: 利用者を責めるような表現ではなく、問題解決をサポートするような、丁寧で落ち着いたトーンでメッセージを作成します。
3. エラー箇所へのナビゲーションを容易にする
複数の入力フィールドがあるフォームなどでエラーが複数発生した場合、ユーザーがエラー箇所を簡単に見つけ、修正できるようにすることが重要です。
- エラーメッセージからのリンク: エラーメッセージから、該当する入力フィールドへ直接ジャンプできるリンクを提供すると、特にキーボード操作やスクリーンリーダー利用者にとって便利です。
- エラーサマリー: フォームの上部などにエラーのリスト(エラーサマリー)を表示し、そこから各エラー箇所へジャンプできるようにすることも有効です。
4. 入力フィールドとエラーメッセージを関連付ける
エラーメッセージが、どの入力フィールドに関連しているかをプログラム的に関連付けることが重要です。これにより、スクリーンリーダー利用者が入力フィールドにフォーカスした際に、関連するエラーメッセージも読み上げられるようになります。
- ARIA属性の活用:
aria-describedby
属性を使用して、入力フィールドとエラーメッセージを関連付けます。これにより、フィールドにフォーカスが当たった際に、そのフィールドの説明に加えて関連するエラーメッセージも読み上げられます。
5. 色だけに頼らないエラー表示
色覚特性のある方や、白黒表示で見ている方もいるため、エラーの表示を色だけに頼ってはいけません。
- 複数の視覚的指標: テキストメッセージに加え、アイコン、太字、下線など、複数の視覚的な指標を組み合わせてエラーを示します。例えば、エラーのある入力フィールドの枠線を赤くするだけでなく、エラーアイコンを表示したり、エラーメッセージのテキストを太字にしたりします。
利用者の視点からの評価
アクセシブルなエラーメッセージは、様々なユーザーのストレスを軽減し、タスク完了を支援します。
- スクリーンリーダー利用者: エラー発生時に自動的に通知があり、エラー内容と修正方法が明確に読み上げられ、関連フィールドに簡単に移動できることで、自力でのフォーム入力が可能になります。
- 認知障害のある方や高齢者: エラーメッセージの言葉遣いが平易で、修正方法が具体的に示されていることで、混乱せず、落ち着いて問題を解決できます。
- キーボード利用者: エラーサマリーやエラーメッセージからのリンクによって、マウスを使わずに効率的にエラー箇所を修正できます。
- 色覚特性者: 色以外の視覚的な指標が提供されることで、エラー箇所や内容を正確に把握できます。
まとめ
ウェブサイトにおけるエラーメッセージのアクセシブルな設計は、単なる技術的な対応に留まらず、すべてのユーザーがサイトを快適かつ円滑に利用できるようにするための重要な配慮です。エラー発生時の明確な通知、分かりやすいメッセージ内容と修正方法の提示、エラー箇所への容易なナビゲーション、そして適切な技術(ARIA属性など)の活用は、利用者体験を大きく向上させます。
これらのポイントを考慮した設計は、情報へのアクセスにおける障壁を取り除き、より多くの人々がデジタルサービスの恩恵を受けられる「情報のユニバーサル化」の実現に貢献します。エラーメッセージ一つをとっても、利用者の立場に立った丁寧な設計が求められているのです。