アクセシブルなウェブサイト 画像の代替テキスト設計
ウェブサイトは、テキストだけでなく様々な要素で構成されています。中でも画像は情報を豊かに伝える上で欠かせない要素です。しかし、画像が視覚的にしか情報を伝えられない場合、すべての利用者がその恩恵を受けられるわけではありません。特に視覚に障害のある方や、インターネット環境によって画像が表示されない方にとって、画像の情報が欠落してしまうことは大きな障壁となります。
画像の代替テキストとは
ここで重要となるのが「代替テキスト」です。代替テキストとは、ウェブサイト上の画像が表示されない場合に、その画像の代わりに表示されるテキストのことです。また、スクリーンリーダーを利用する方にとっては、画像の内容を音声で読み上げるための情報源となります。HTMLの<img>
タグのalt
属性に記述されます。
<img src="example.jpg" alt="これは代替テキストの例です">
この短いテキストがあるかないかで、情報の伝わりやすさは大きく変わります。これは単に技術的な要件を満たすだけでなく、情報のユニバーサル化を実現するための基本的なステップと言えます。
代替テキストの目的と利用者の視点
代替テキストを設定する主な目的は、画像を見ることができない利用者に対して、画像が持つ情報や機能をテキストで提供することです。
例えば、ウェブサイトでイベントの告知ポスター画像が掲載されているとします。もし代替テキストが設定されていなければ、スクリーンリーダーの利用者はそこに画像があることさえ分からないかもしれません。あるいは、ファイル名だけを無味乾燥に読み上げられるだけで、画像の内容を全く把握できません。
適切な代替テキスト、例えば「[イベント名] ポスター:開催日 [日付]、場所 [場所]、詳細はこちらをご覧ください」のような情報が含まれていれば、画像を見ることなくイベントの概要を理解し、興味を持つことができます。このように、代替テキストは画像の「意味」や「目的」を伝える役割を果たします。
効果的な代替テキスト設計のポイント
では、どのような代替テキストが効果的と言えるのでしょうか。設計のポイントをいくつかご紹介します。
- 画像の内容や機能を簡潔に伝える: 画像が何を表しているのか、またはその画像がどのような目的で使用されているのかを明確に記述します。例えば、グラフ画像であれば「2023年の売上推移を示す棒グラフ」、地図画像であれば「主要施設を示した周辺地図」などです。
- 装飾的な画像には空の代替テキストを設定する: デザインのためだけに配置され、情報を持たない画像(例: 区切り線、背景の一部など)には、
alt=""
のように空の代替テキストを設定します。これにより、スクリーンリーダーがその画像をスキップし、利用者が不要な情報の読み上げに煩わされることを防ぎます。 - 画像がリンクになっている場合: 画像がリンクの役割を兼ねている場合は、リンク先やその画像の機能を説明する代替テキストを設定します。「詳細ページへのリンク」や「商品の購入ページへ進むボタン」など、リンクの遷移先が予測できるような表現が望ましいです。画像がテキストを含むボタンであれば、そのテキストを代替テキストとします。
- 複雑な画像への対応: グラフや図解など、情報量が多い複雑な画像の場合は、短い代替テキストでは情報を伝えきれません。その場合は、代替テキストで画像が複雑な情報を含んでいることを示唆し(例: 「[グラフ名]:詳細は本文を参照」)、画像の直後やリンク先などで詳細な説明をテキストで提供することが推奨されます。
- キーワードの詰め込みすぎに注意: 代替テキストは、主に利用者への情報提供を目的としています。検索エンジン対策として関連性のないキーワードを羅列する行為は、利用者の混乱を招くため避けるべきです。自然な言葉で、画像の内容や機能を説明することを優先してください。
まとめ
画像の代替テキスト設定は、ウェブアクセシビリティの基本的な、しかし極めて重要な要素です。これにより、視覚に障害のある方、スクリーンリーダー利用者、低速なネットワーク環境の利用者など、多様なバックグラウンドを持つ方々が、画像が伝える情報を適切に受け取れるようになります。
代替テキストの適切な設計は、単なる技術的な作業ではなく、あらゆる利用者がウェブサイト上の情報に公平にアクセスできる環境を整備し、情報格差を解消するというユニバーサルデザインの理念に基づいた取り組みです。ウェブサイト設計やコンテンツ作成において、常に利用者の視点に立ち、画像一つ一つに適切な代替テキストを付与することを心がけることが、より多くの人々にとって使いやすいウェブサイトの実現に繋がります。